急行のとまる街1978 -6 S.フォックス _ ♪ Downtown ♪
会社のある内幸町や新橋駅・烏森界隈の店を出て、同僚とTAXIに乗る。行先は渋谷警察の先にあるS.フォックスだ 。外堀通りを赤坂見附から青山通りへ入り、宮益坂を左に下る。明治通りを左に折れてすぐの場所、いつものTAXIのルートだ。東京へ出てきたその年に、一人で偶然見つけたお店である。
TAXIを降りて、地下のお店に入るとマホガニーの上等なカウンターがあり、対面にはソファーのテーブル席が三つある。棚のボトルキープはWHITE HORSE。好きなレーズンバターが定番だ。フロアの奥の壁にはオープンリールのテープデッキが掛り、流れる曲はバラード調のジャズボーカル。昭和いっぱいの雰囲気が漂っていた。
仕事が忙しい時ほどよく通い1人グラスをかたむける時間もお気に入りだった。
今、そのシーンにタイムスリップすることが出来るとしたら、どんな曲がお気に入りだろうか。 Diana Rossの ♪ Where Did Our Love Go ♪ (愛はどこへ行ったの)、いや Petula Clarkの ♪ Downtown ♪ (恋のダウン・タウン)の方がいいか。
真夏でもスーツを着込みエアコンなしの電車、東横線・銀座線の通勤を想い出す。会社の机上に「Windows」が登場するのは未だ随分先のことだ。
お店は渋谷駅周辺の開発、建物取り壊しのため7年ほど前に閉店した。
(追記) ところで、お店のすぐ後ろには、コンクリート造りの渋谷川が流れている。この川は、大正時代に作られた唱歌 ♪ 春の小川 ♪ のモデルとなった川だ。渋谷より少し上流の代々木辺りの情景が詠まれた歌の様である。
渋谷区の開発資料によれば、お店のあった辺り、渋谷川の両岸は公園ゾーンとしてイメージパースが描かれている。何年か後には、カフェなどが建ち並ぶ街路に変貌するのであろうか。